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農業法人の設立要件と手続きの流れ|行政書士が支援できるポイント
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「家族経営から法人化したい」「農地を借りて規模を広げたい」「補助金や融資の話が出てきて、法人の方が進めやすいと言われた」――農業の現場では、こうした理由で“農業法人(農業を行う法人)”の設立を検討する場面が増えています。
一方で、農業の法人化は、一般的な会社設立と同じ感覚で進めると手戻りが起きやすい分野です。とくに「農地を法人で取得・賃借したい」「農地所有適格法人(旧:農業生産法人)として運用したい」という場合、役員構成・議決権・事業内容などに制度上の要件があり、設計段階の整理が重要になります。
設立後も、農地法の許可・届出、各種契約書の整備、行政への提出書類、定期的な変更手続きなど、事業を止めないための“運用”が続きます。最初の段取りを丁寧に組むことで、スムーズに法人化できます。
目次
農業法人とは何か?法人化でできること・変わること
1. 「農業法人」は法人形態の総称
「農業法人」は法律上の単一の法人格を指す言葉ではなく、農業を営む法人の総称です。実務では、株式会社・合同会社・農事組合法人などで設立するケースが多く、目的(農地の利用、資金調達、事業承継、加工販売の拡大など)に合わせて形態を選びます。
| 選択肢 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 株式会社 | 出資と経営を分けやすく、資金調達・対外信用を得やすい | 株主構成・議決権設計が重要。農地の利用を見据える場合は要件設計が要 |
| 合同会社 | 内部の柔軟性が高く、設立・運用コストを抑えやすい | 出資者=経営者の色が強い。対外的な見え方を考慮して選択 |
| 農事組合法人 | 共同利用・共同作業など協業に適した仕組み | 組合員要件・運営ルールがある。設立目的に合致するか確認が必要 |
POINT|最初に決めるのは「農地を法人でどう使うか」です
農業法人の設立は、会社の形だけ決めても前に進みません。農地を法人名義で取得するのか、賃借するのか、代表者個人で持ったまま法人が耕作するのかで、必要な許可・契約・要件設計が変わります。
2. 法人化で得られる代表的なメリット
メリット|農業を法人化する主な利点
- 対外信用が高まり、取引・融資・補助事業の説明がしやすくなる
- 役割分担や権限設計ができ、共同経営・雇用拡大を進めやすい
- 事業承継を計画化しやすく、持分・株式の整理で引継ぎをしやすくなる
3. 先に押さえるべき注意点(よくあるつまずき)
法人化は万能ではありません。設立後は、決算・税務・社会保険・役員変更・定款変更など、法人運用の事務が増えます。さらに農地の取得・賃借を絡める場合、制度要件と行政手続きが加わるため、設計ミスがそのまま「農地が使えない」結果につながります。
CAUTION|法人を作ってから「農地の話」をすると手戻りが起きます
農地の取得・賃借を前提にする場合、役員構成や議決権、事業内容の書き方が要件に直結します。設立後に定款や構成を直すと、登記変更や追加書類が必要になり、開業スケジュールが遅れる原因になります。
農業法人の「設立要件」|どこまでが必須で、何を整えるべきか
1. 会社としての基本要件(定款・機関設計・出資)
まずは一般の会社設立と同様に、法人の基本設計が必要です。株式会社なら定款作成・公証人認証・資本金払込み・設立登記、合同会社なら定款作成・出資払込み・設立登記が中心になります。
| 項目 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 目的(事業内容) | 農業(耕作・畜産等)に加え、加工・販売・体験事業等を含める設計 | 実態に沿って記載。将来の展開も見据えつつ、要件に影響する書き方は慎重に |
| 役員・社員(構成員) | 誰が意思決定し、誰が現場を担うかの整理 | 農地の利用を見据える場合、構成と議決権を先に整える |
| 資本金・出資 | 設立時の資金規模、運転資金の確保 | 設備投資・雇用・賃借料等を踏まえ、資金計画とセットで決める |
2. 農地を法人で扱う場合の要件(農地所有適格法人の考え方)
農地を法人で取得・賃借する場面では、「農地を適正に利用できる主体か」を確認する枠組みがあります。実務では、農地の取得・賃借の申請時に、法人の体制や事業内容の説明資料を求められることが一般的です。
農地所有適格法人として運用する場合、農業関係者が意思決定を担う体制、主たる事業が農業であること、農業に常時従事する役員がいること等、複数の要件を満たす必要があります。要件の整理は、定款・株主(社員)構成・役員構成と連動するため、設立前の設計が重要です。
POINT|「農地を法人で借りる予定」があるなら、設立前に要件確認が必須です
農地の利用を法人で行う場合、法人の構成や事業内容の設計が、許可・届出の審査に直結します。設立前に要件を整理しておくことで、農地手続きと設立登記を同じスケジュールで組めます。
3. 設立時に揃えるべき書類の全体像
会社設立の書類に加え、農地手続きや各種契約・運用に必要な資料が発生します。たとえば、賃借契約書、事業計画(作付・面積・人員体制)、役員の農業従事状況の整理、圃場位置図などが求められる場面があります。提出先(法務局・農業委員会・市町村等)ごとに必要書類が異なるため、事前の整理が重要です。
手続きの流れ|設立から農地・運用まで(実務の標準ルート)
1. 設立前の準備(設計・要件整理・スケジュール化)
まずは「法人で何をするか」「農地をどう扱うか」「誰が意思決定し、誰が現場を担うか」を整理し、必要な許可・届出を洗い出します。物件契約・農地の賃借開始日・補助事業の申請時期など、外部スケジュールに合わせて逆算することが重要です。
法人設計の確定(形態・目的・構成・資金計画)
株式会社・合同会社・農事組合法人の選択、事業内容、役員・出資、資金計画を確定します。
農地の扱いを整理(取得・賃借・個人保有のまま利用など)
農業委員会等で必要となる手続きの区分を整理し、必要書類と時期を確定します。
全体スケジュールを作成(登記・契約・行政手続き・開業日)
登記完了日と農地手続きのタイミングを合わせ、手戻りのない順番で組み立てます。
2. 設立手続き(定款・登記・届出)
法人の設立は、定款作成から登記までがコアです。株式会社の場合は定款認証が必要で、合同会社は不要です。登記完了後、税務・年金・労務関連の届出、銀行口座の開設、各種契約の名義変更など、運用開始の準備が続きます。
たとえば「代表者個人の口座で資金を動かし続けてしまう」「契約名義の切替が遅れて補助事業の書類に齟齬が出る」といったトラブルは、設立直後に起こりやすいポイントです。設立後の運用まで見据えて段取りを組むことが重要です。
3. 農地・契約・運用の整備(許可・届出・書類管理)
農地を法人で取得・賃借する場合、農地法にもとづく許可・届出等の手続きが関わります。また、賃借契約書の内容、圃場の特定資料(地番、位置図等)、事業計画や体制説明など、提出先が求める資料に合わせた整備が必要です。自治体や所管機関の運用により、必要資料や様式が異なるため、提出先の手引・様式に沿って準備します。
CAUTION|契約を先に進める前に「名義」と「開始日」を必ず確認
農地の賃借や施設の契約は、名義(個人/法人)と開始日が、行政手続きや補助事業の書類と連動します。契約締結前に、提出先で求められる条件と整合するかを確認することで、後戻りを防げます。
4. 具体例:家族経営から法人化して雇用拡大するケース
たとえば、代表者と家族で運営していた農園が、加工品の販売先が増えたことをきっかけに法人化し、従業員を採用するケースがあります。この場合、事業目的に「農産物の生産」「加工」「販売」を入れ、就業規則や雇用契約の整備、補助事業に提出する事業計画の整合、契約名義の切替など、法人化によって増える手続きをセットで整理する必要があります。最初に“法人でやること”を明確にしておくと、設立後の混乱を防げます。
行政書士が支援できるポイント|設立を「止めない」ための実務支援
1. 要件整理とスキーム設計(農地・構成・事業内容の整合)
農業法人の設立では、定款の目的や構成員の設計が、農地手続き・契約・補助事業の書類に影響します。行政書士は、事業の実態に沿って、必要な許可・届出の整理と、書類の整合を取る支援ができます。
POINT|「何をどこに出すか」を最初に地図化します
設立登記、農地の許可・届出、契約書、提出先様式――提出先が複数になるのが農業法人の特徴です。最初に提出先と提出物を整理し、順番と期限を固定することで、設立が止まりません。
2. 書類作成・添付資料の整備(図面・契約・説明資料)
実務では、申請書だけでなく、位置図、施設図面、契約書案、体制説明、事業計画など、添付資料の完成度が審査・確認のスムーズさに直結します。行政書士は、提出先の様式と運用に合わせて、必要な資料の組み立てを支援できます。
3. 事前相談・補正対応(提出先との調整)
農地や施設を絡める手続きでは、事前相談で確認しておくべきポイントが多くあります。提出後に補正(追加資料や修正)が必要になった場合も、指示内容に沿って迅速に対応し、開業スケジュールに影響が出ないよう調整します。
メリット|行政書士を入れることで進行が安定する理由
- 提出先ごとの様式・運用に合わせて、最初から整合した書類を組める
- 「登記」「農地」「契約」「運用」の順番を固定し、手戻りを防げる
- 補正対応の負担を軽くし、現場(農作業)を止めずに進められる
よくある質問(FAQ)
農業法人にすると、農地は自動的に法人名義で使えますか?
自動的には切り替わりません。農地の取得・賃借には、契約や許可・届出等の手続きが関係します。法人設立の設計段階で、農地の扱い(取得/賃借/個人保有のまま法人が耕作等)を整理し、必要手続きを組み立てる必要があります。
株式会社と合同会社、どちらが農業に向いていますか?
目的によります。対外信用や将来の出資受入れを重視するなら株式会社、内部の柔軟性と運用コストを重視するなら合同会社が選ばれやすい傾向です。農地の利用を絡める場合は、構成や議決権設計を含めて、要件と整合する形で選択します。
法人化のタイミングは、農繁期を避けた方がいいですか?
避けた方が進めやすい場面が多いです。登記や契約名義の切替、提出書類の収集など、設立前後は事務負担が増えます。農繁期の作業を止めないためにも、設立スケジュールと現場のピークをずらして計画することが有効です。
行政書士には、どこまで依頼できますか?
許認可・届出に関する要件整理、提出書類の作成、提出代行、補正対応、提出先との調整などを支援できます。農業法人の場合は、設立前のスキーム整理(農地・構成・事業内容の整合)から入ることで、設立後の手戻りを防げます。
行政書士あさみ法務事務所にご相談いただくメリットとサポート内容
農業法人の設立は、「法人を作る」だけで終わりません。農地の扱い、契約名義、提出先ごとの書類、運用開始後の変更対応まで、全体を一本の線でつなぐことで、スケジュールが安定します。行政書士あさみ法務事務所では、事業の実態と目的を丁寧に伺い、必要な手続きを整理し、提出書類を整えて進め方を提案します。
- 法人設計の整理(形態選択、目的・体制・資金計画の整理)
- 農地の扱いを踏まえた要件整理と書類整合(契約・説明資料の整備)
- 提出書類の作成・提出代行・補正対応(提出先との調整を含む)
- 設立後の運用支援(変更時に必要な手続きの整理と期限管理)
農業法人設立サポートの詳細は下記ページでご案内しています。
「農地の扱いをどう設計すべきか」「法人形態の選び方が不安」「スケジュールを組んで確実に進めたい」といった段階からご相談いただけます。
無料相談のご案内
農業法人設立の要件整理から、各種許認可・提出書類の整備までスムーズに進めるための段取りをご案内します
行政書士あさみ法務事務所(代表:中川麻美)は、事業の要件確認から
各自治体の運用や手引きの違いも踏まえ、御社の状況に合わせた最適な進め方をご提案します。
※必要書類や運用は所管庁によって異なります。最新の手引・告示を確認しつつ、当事務所でも適切な進め方をご案内します。
