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建設業許可の業種追加をスムーズに進めるための実務ポイント
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「現在の許可業種以外の工事も受注したい」「業種追加の手続きって複雑そう」「必要書類や費用はどれくらいかかるの?」
建設業許可を既に取得されている事業者様から、事業拡大に伴う業種追加について、このようなご相談を数多くいただいております。
建設業許可の業種追加は新規許可よりも手続きが簡素化されており、適切な準備と手順を踏めば、効率的に許可範囲を拡大することが可能です。しかし、専任技術者の要件や財務状況の確認など、重要なポイントを見落とすと申請の遅延や不許可につながる恐れがあります。
この記事では、建設業許可の業種追加手続きの基本的な流れから必要書類の準備方法、よくある失敗例と対策まで、確実な業種追加に向けた実用的な情報をお届けします。
適切な知識と準備により、スムーズな業種追加を実現し、事業拡大の機会を確実に捉えることができます。
建設業許可の業種追加制度の概要
1. 業種追加とは何か
建設業許可の業種追加とは、既に建設業許可を取得している事業者が、現在許可を受けていない業種について新たに許可を取得する手続きです。
許可を受けていない建設工事業種で軽微でない工事を受注する場合具体例:
• 建築一式工事の許可→内装仕上工事業の追加
• 土木一式工事の許可→とび・土工工事業の追加
• 電気工事業の許可→管工事業の追加
2. 業種追加と新規許可の違い
業種追加は新規許可と比較して、手続きが簡素化されています。
| 項目 | 新規許可 | 業種追加 |
|---|---|---|
| 経営業務管理責任者(常勤役員等) | 詳細な証明書類が必要 | 既存許可で確認済み |
| 財産的基礎 | 詳細な財務書類が必要 | 直前決算のみで可 |
| 誠実性・欠格要件 | 全ての証明書類が必要 | 既存許可で確認済み |
| 審査期間 | 45日程度 | 30日程度 |
3. 業種追加のタイミング
業種追加を行う最適なタイミングを理解することで、事業機会を最大化できます:
- 受注予定の決定時:新しい業種での工事受注が具体化した段階
- 事業計画の策定時:中長期的な事業拡大計画に合わせた申請
- 更新申請時:許可更新と同時に業種追加を行う効率的な申請
- 組織体制の整備時:専任技術者の確保など体制が整った段階
業種追加の要件と条件
1. 営業所技術者の配置要件
業種追加で最も重要な要件は、追加する業種の専任技術者を適切に配置することです。
専任技術者の配置パターン
1. 新たな専任技術者の雇用
追加業種の資格・経験を持つ技術者を新規採用
2. 既存技術者の兼任
現在の営業所技術者が追加業種の資格も保有している場合
3. 実務経験による証明
既存技術者が追加業種での実務経験を証明する場合
必要書類と準備手順
1. 業種追加の基本書類
業種追加申請で提出が必要な書類は、新規許可と比べて大幅に簡素化されています。
| 書類分類 | 必要書類 | 取得先・作成者 |
|---|---|---|
| 申請書類 | 建設業許可申請書(様式第一号) 工事経歴書(様式第二号) 直前3年の工事施工金額(様式第三号) |
申請者が作成 |
| 専任技術者関係 | 専任技術者証明書 資格証明書(写し) 実務経験証明書 |
申請者が作成・証明機関 |
| 財務関係 | 直前決算の財務諸表 納税証明書 |
申請者が作成・税務署 |
| その他 | 誓約書 登記事項証明書 健康保険証(写し) |
申請者・法務局・保険者 |
2. 営業所技術者証明書の作成ポイント
業種追加で最も重要な書類である営業所技術者証明書の作成ポイント:
• 氏名・生年月日:住民票と一致する正確な情報
• 資格の名称:正式名称での記載(略称は使用不可)
• 資格取得年月日:資格証明書と完全一致
• 実務経験期間:年月日単位での正確な記載
• 常勤性の証明:営業所での勤務実態の明確化
3. 書類準備のスケジュール
効率的な業種追加のための書類準備スケジュール:
- 申請2か月前:要件確認・専任技術者の選定
- 追加業種の営業所技術者要件確認
- 既存技術者の資格・経験調査
- 新規雇用の必要性判断
- 申請1か月前:書類収集・作成開始
- 資格証明書の取得・コピー作成
- 実務経験証明書の作成・収集
- 財務諸表の整備
- 申請2週間前:最終確認・申請書作成
- 申請書の作成・内容確認
- 添付書類の最終チェック
- 申請手数料の準備
- 申請提出・審査期間(30日程度)
- 申請書提出
- 補正対応
- 許可証交付
申請手続きの流れ
1. 事前相談と要件確認
業種追加の成功確率を高めるため、事前の入念な準備が重要です。
事前確認すべき重要ポイント
1. 営業所技術者の要件適合性
• 追加業種での資格保有状況
• 実務経験年数の充足
• 営業所での常勤性
2. 財産的基礎の充足状況
• 直前決算での自己資本額
• 流動比率等の財務指標
3. 営業所の管理体制
• 追加業種を含めた営業体制
• 技術者の適切な配置
2. 申請書の提出手続き
業種追加申請の提出先と手続きについて:
| 許可区分 | 提出先 | 手数料 |
|---|---|---|
| 都道府県知事許可 | 営業所所在地の都道府県 | 50,000円 |
| 国土交通大臣許可 | 地方整備局建政部 | 50,000円 |
3. 審査期間と補正対応
業種追加の審査は標準審査期間30日で行われます:
- 受付・形式審査:提出書類の形式的な確認(1〜3日)
- 実質審査:要件適合性の詳細審査(20〜25日)
- 補正対応:不備がある場合の書類補正(随時)
- 決定・許可証交付:審査完了後の許可証発行(2〜5日)
よくある失敗例と対策
1. 営業所技術者関係のトラブル
業種追加で最も多いトラブルが営業所技術者要件に関するものです。
| 失敗例 | 原因 | 対策 |
|---|---|---|
| 資格証明の不備 | 資格証明書の有効期限切れ | 事前の資格証明書確認 |
| 実務経験の不足 | 経験年数の計算ミス | 正確な期間計算・証明書作成 |
| 常勤性の証明不足 | 健康保険未加入・住所不一致 | 適切な社会保険加入・住所整理 |
2. 書類作成・提出のミス
申請書類の作成・提出段階でのよくあるミス:
• 記載内容の一貫性:各書類間での情報の整合性確保
• 証明書類の有効性:添付書類の有効期限・発行者確認
• 署名・押印の適正性:法人印・個人印の正確な使用
• 様式の最新性:行政庁が定める最新様式の使用
• 提出部数:正本1部・副本規定部数の確認
3. スケジュール管理の失敗
業種追加のスケジュール管理で注意すべき点:
- 工事着手時期との調整:許可取得前の工事受注・着手の回避
- 更新時期との重複:更新申請との同時進行による混乱防止
- 技術者確保の遅延:専任技術者の採用・配置の遅れ
- 書類収集の遅れ:証明書類取得に要する期間の軽視
効率的な業種追加のコツ
1. 複数業種の同時追加
複数の業種を同時に追加することで、効率性とコスト削減が可能です。
• 手数料の節約:申請回数削減による費用効率化
• 事務負担の軽減:書類作成・提出作業の一本化
• 審査期間の短縮:個別申請よりも全体期間の短縮
• 事業計画との整合:中長期計画に基づく一括対応
• 管理の簡素化:許可証の管理・更新スケジュールの統一
2. 更新申請との同時手続き
既存許可の更新時期に合わせた業種追加の活用:
| 手続き区分 | 単独申請 | 同時申請 |
|---|---|---|
| 手数料 | 更新50,000円+業種追加50,000円 | |
| 書類作成 | それぞれ個別作成 | 共通書類の一本化 |
| 審査期間 | 個別に30日ずつ | 同時に30日程度 |
3. 専任技術者の効率的な配置
専任技術者の効率的な配置戦略について:
- 兼任可能な組み合わせ:関連業種での同一技術者による兼任
- 段階的な資格取得:既存技術者の追加資格取得支援
- 実務経験の活用:長期勤続者の実務経験による要件充足
- 統括責任者制度:特定建設業での統括責任者配置
専門家活用のメリット
1. 行政書士による専門的サポート
業種追加手続きでは、行政書士の専門知識が大きなメリットをもたらします。
• 要件判定の正確性:複雑な専任技術者要件の正確な判断
• 書類作成の効率化:経験に基づく迅速かつ正確な書類作成
• 補正リスクの最小化:事前チェックによる一発承認率向上
• スケジュール最適化:他手続きとの調整・同時進行
• 継続的なサポート:取得後の変更届・更新まで一貫対応
2. コンサルティング効果
単なる手続き代行を超えた戦略的なコンサルティング:
- 事業計画との連携:中長期的な事業展開を見据えた業種選択
- 組織体制の最適化:技術者配置・人事戦略のアドバイス
- リスク管理:許可要件維持・法令遵守体制の構築支援
- 競争力強化:許可範囲拡大による受注機会の最大化
3. 費用対効果の考慮
専門家依頼の費用対効果を適切に評価する視点:
| 効果項目 | 自社対応 | 専門家依頼 |
|---|---|---|
| 時間コスト | 社内人件費・機会損失大 | 本業集中・効率化 |
| 成功確率 | 補正・遅延リスク高 | 一発承認率向上 |
| 戦略性 | 手続きのみ対応 | 事業戦略との連携 |
まとめ
建設業許可の業種追加は、適切な準備と手順を踏めば、新規許可よりも効率的に許可範囲を拡大できる制度です。営業所技術者の確保と適切な書類準備が成功の鍵となります。
成功のための重要ポイント:
- 営業所技術者要件の事前確認と適切な配置
- 計画的な書類準備とスケジュール管理
- 複数業種や更新との同時手続きによる効率化
- 継続的な要件維持と変更届の適切な提出
- 専門家による戦略的なサポートの活用
業種追加は、事業拡大の重要な手段です。市場機会を逃すことなく、確実な許可取得により、新たなビジネスチャンスを獲得することができます。
複雑化する建設業界において、適切な許可範囲の確保と専門的知識に基づく手続きにより、持続的な事業成長の基盤を築くことが可能です。
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