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建設業許可取得後に必要な毎年の手続きとは?事業年度終了報告を忘れずに
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建設業許可を取得した後は、毎年の「事業年度終了報告(通称:決算変更届)」が義務です。原則、事業年度終了後4か月以内に提出しないと、罰則・指示処分や更新申請・経審・入札に影響するおそれがあります。本記事では、提出期限・提出先・必要書類・作り方・よくある不備まで、実務で使えるチェックリストとフローチャート付きでわかりやすく解説します。
- 建設業許可の「毎年の手続き」を整理したい
- 事業年度終了報告(決算変更届)の提出期限と必要書類を素早く把握したい
- 提出漏れ・不備をなくし、更新・経審・入札に影響を出したくない
- 電子申請・郵送・窓口持参の選び方と段取りを知りたい
目次
毎年の必須手続き|事業年度終了報告の全体像
1. 事業年度終了報告(決算変更届)とは
建設業許可事業者は、毎事業年度の終了後に、その年度の工事実績・財務内容などを所管庁へ報告する義務があります。名称は各庁で「事業年度終了報告」「決算変更届」「年次報告」などと呼ばれますが、求められる内容の骨格は同じです。
2. 提出を怠るリスク
- 法的義務(建設業法に基づく年次の報告)
- 罰則・監督処分の対象になる可能性
- 更新申請の受理・経審・入札資格に支障(直近実績の欠落)
※提出期限・様式・添付は所管庁で異なるため、最新の手引きを必ずご確認ください。
提出期限・提出先|4か月以内&許可の種類で提出先が変わる
1. 提出期限(原則)
| 決算期 | 提出期限の目安 | 補足 |
|---|---|---|
| 3月末決算(法人に多い) | 7月末まで | 事業年度終了後 4か月以内 |
| 12月末(個人に多い) | 翌年4月末まで | 同上 |
2. 提出先(許可区分別)
- 知事許可:本店所在地の都道府県(建設業担当課・土木事務所 等)
- 大臣許可:本店所在地を管轄する地方整備局等(北海道は開発局、沖縄は総合事務局)
※大臣許可の提出先は、令和2年改正で「都道府県経由」が原則廃止され、各地方整備局等への直接提出が基本です。
必要書類一覧|法人・個人の違いと注意点
1. 基本セット(都道府県例)
| 区分 | 書類名 | ポイント |
|---|---|---|
| 表紙 | 変更届出書(決算報告の表紙) | 自治体様式に沿って作成(記載要領あり) |
| 工事実績 | 工事経歴書(様式2号) | 実績のない業種は「無」の記載または1枚集約の運用あり |
| 施工金額 | 直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式3号) | 決算期を変更した場合は「直前3年」の扱いに注意 |
| 財務諸表(法人) | 貸借対照表・損益計算書・株主資本等変動計算書・注記表 ほか | 様式(15号等)・科目整合・押印要否は手引き確認 |
| 財務諸表(個人) | 貸借対照表・損益計算書 等 | 青色申告決算書の数値と整合させる |
| 納税証明 | 法人事業税/個人事業税の納税証明書 等(所管庁指定) | 年度・税目の指定に注意(原本/写しの別) |
※必要書類・様式名は所管庁で異なります。
※東京都の様式例:表紙(別紙8)、工事経歴書(2号)、直前3年施工金額(3号)、財務諸表(15号) など。
2. ケース別の注意点
決算期を変更した場合
「直前3年」は期間で判断します(=直前3期とは限らない)。決算期変更があると作表の切り方を誤りやすいので、年度の起算・終期を年ベースで確認。
工事実績が0の業種がある場合
「無」の記載方法や1枚集約の可否は手引きに従います(記載欄を空欄にしない)。
電子帳簿・クラウド会計を利用している場合
財務諸表の様式変換・科目マッピングに注意。建設業様式の科目体系と合致させます。
作成・提出フロー(フローチャート)
決算確定・数値の固定
工事経歴の整理
様式作成(表紙・2号・3号・財務)
添付収集(納税証明 等)
提出(電子・郵送・窓口)
控え・社内共有・次工程
提出前チェックリスト(不備ゼロのために)
| 項目 | 確認ポイント | 確認 |
|---|---|---|
| 提出期限 | 事業年度終了から4か月以内の最終日をカレンダーで特定 | □ |
| 提出先 | 知事許可=都道府県/大臣許可=地方整備局等で正しいか | □ |
| 工事経歴書 | 主要工事の記載方針、完成/継続の区別、元・下請の別が明確 | □ |
| 直前3年の施工金額 | 決算期変更時も「直前3年」で集計(3期ではない) | □ |
| 財務諸表 | 建設業様式・科目の整合、単位・端数処理の統一、押印要否 | □ |
| 納税証明 | 税目・年度・原本/写し・有効期限の確認(取得に日数) | □ |
| 提出方法 | 電子申請の可否、郵送は返信用封筒・切手、窓口は受付時間帯 | □ |
よくあるミスとリカバリー
1. 期限切れ(提出遅れ)
提出遅延は監督処分や更新・経審・入札への影響につながります。所管庁の案内に従い、必要に応じて理由書の提出や指示に従って速やかに是正します。
2. 直前3年を3期と混同
決算期変更時に典型的な不備。対象期間を年で取り直し、重複・欠落をなくします。
3. 科目不整合・端数処理の混在
会計ソフト出力をそのまま貼ると科目名や単位が様式と合わないことがあります。建設業様式にマッピングして統一。
4. 添付不足(納税証明・受領控え)
納税証明の税目・年度を誤りやすいほか、受領印・受付メールの控えが残らないケースがあります。取得手順の標準化と控えの電子保存を徹底。
経審・入札・更新との関係
1. 経審
工事経歴・施工金額・財務諸表は経審の基礎データです。年次報告の整合が崩れると評点算定や審査書類の作り直しが生じます。
2. 入札参加資格
自治体の指名・競争入札資格の更新時に、直近年次報告の提出済みが前提になっている運用が一般的です。電子入札システムの登録情報とも整合を取ります。
3. 許可更新(5年ごと)
更新審査では、過去分の年次報告が揃っていることが前提です。未提出があると受付不可となる場合があります。
電子申請・郵送・窓口の選び方
1. 電子申請
対応している所管庁では最短・確実。PDF化・ファイル容量・拡張子制限、押印省略の扱いを要確認。
2. 郵送
控え返送用の返信レターパック・切手・宛名を忘れずに。締切直前は到着日・消印有効の扱いに注意。
3. 窓口持参
受付時間・事前予約の有無・部数。修正がその場で済むメリットも。
よくある質問(FAQ)
1. 「決算変更届」は変更がない年も必要ですか?
必要です。名称に「変更」とありますが、決算ごとに毎年提出します。
2. 間に合わなかった場合の影響は?
監督処分や更新・経審・入札への影響が生じるおそれがあります。速やかに所管庁へ相談のうえ是正します。
3. 提出先はどこ?
知事許可=都道府県、大臣許可=地方整備局等です(本店所在地の管轄)。
4. 直前3年の施工金額がわかりません
会計データから年度別に抽出。決算期変更がある場合は3年を期間で再集計します。
5. 財務諸表の科目が様式と合わない
建設業用様式にマッピングし、科目名・表示順・単位を統一します。
まとめ|「4か月」「提出先」「整合性」を外さない
建設業許可の維持には、毎年の事業年度終了報告が欠かせません。(1)4か月以内の期限厳守、(2)許可区分に応じた提出先、(3)工事経歴・施工金額・財務諸表の整合を外さなければ、更新・経審・入札までスムーズに接続できます。社内で「工程表」と「チェックリスト」を標準化し、不備ゼロ運用に切り替えましょう。
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行政書士あさみ法務事務所(代表:中川麻美)は、建設業許可の年次報告・変更届・更新・経審・入札資格まで一気通貫でサポート。
「自社に合った様式」「期限逆算スケジュール」「電子申請の可否」を個別設計します。
※様式・添付・押印・提出方法は所管庁で異なります。最新の手引・告示をご確認ください。
