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経審の点数アップに繋がる財務改善方法
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公共工事の入札において重要な評価制度である「経営事項審査(経審)」では、財務内容が得点に大きく影響します。特に「経営状況分析(Y点)」は、建設業者の資金繰りの安定性や収益力、借入金依存度などを数値化するため、財務内容が整っている企業ほど高得点を獲得できます。
一方で、「経審の財務指標がよく分からない」「決算書は毎年作っているが点数が伸びない」という声も少なくありません。経審で求められる財務内容は、単なる黒字・赤字の評価とは異なり、専門的な項目が多く含まれます。
本記事では、経審の点数アップに直結する財務改善のポイントを、具体例を交えて解説します。財務内容の見直しはすぐに結果が出るものではありませんが、長期的に取組むことで確実に経審の得点向上につながります。
経審における財務評価(Y点)の仕組み
1. Y点(経営状況分析点数)とは
経営事項審査におけるY点は、建設業財務諸表(決算書)の内容をもとに、企業の財務健全性を評価する項目です。建設業法に基づき国土交通省の指定機関(経営状況分析機関)が点数を算出します。
評価対象となる主な財務指標は以下の通りです。
| 評価項目 | 内容 |
|---|---|
| 自己資本比率 | 借入に依存せず内部資本がどれだけ厚いか |
| 流動比率 | 短期の支払い能力の高さ |
| 債務償還年数 | 借入金返済の負担水準 |
| 売上高経常利益率 | 収益力の安定性 |
| 総資本売上高純利益率 | 資本効率の良さ |
| 利益剰余金/総資本 | 内部留保の蓄積状況 |
| 有利子負債依存度 | 借入金への依存度 |
これらの数値をもとにスコア化され、Y点が決まります。
2. 財務指標は「バランス」で評価される
Y点は、たった1つの項目だけを改善すれば劇的に上がるものではなく、全体のバランスが重要です。
たとえば利益は出ていても借入依存が高ければ評価は伸び悩みます。反対に利益が薄くても自己資本比率が高ければ得点を維持できるケースもあります。
そのため、複数の指標を並行して改善することが、Y点向上の基本戦略となります。
財務改善による得点アップの具体策
1. 借入金を減らして債務償還年数を改善する
債務償還年数(借入金返済年数)は、借入金の残高を営業利益等で割った指標です。この年数が短いほど、返済能力が高いと評価され、得点にプラスとなります。
対策例
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不要不急の借入は極力控える
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決算直前に可能な範囲で繰上返済を行う
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運転資金は利益で賄う体質に切り替える
特に決算直前に借入残高を減らすと即時に反映されやすいため、計画的に返済スケジュールを調整することが有効です。
2. 黒字経営を継続し利益剰余金を積み増す
利益剰余金(内部留保)は、過去の利益の蓄積です。黒字決算を続けることで徐々に積み重なり、自己資本比率や純利益率の改善にも貢献します。
対策例
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毎年確実に黒字を維持する
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配当より内部留保を優先する経営方針にする
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利益圧縮のための過度な節税策を控える
利益剰余金が厚みを増すことで、経審上も安定企業とみなされ高評価となります。
3. 自己資本比率の向上を目指す
自己資本比率とは、資産に対して自己資本がどれだけあるかを示す比率です。借入を減らす、利益剰余金を積み上げる、などの施策が総合的に自己資本比率の向上につながります。
対策例
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毎期黒字決算を目指す
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不要な資産の整理で資本構成を健全化する
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増資による資本金の強化を検討する
自己資本比率は企業の「安全性」を数値化する代表的な指標であり、評価への影響が大きい項目です。
4. 流動比率の改善
流動比率は、1年以内に支払うべき負債に対して流動資産(現金・売掛金・在庫など)がどれだけあるかを示す短期安全性の指標です。
対策例
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売掛金の回収サイト短縮
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不良在庫の処分・整理
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現預金残高の一定水準確保
流動比率は「決算日でのスナップショット評価」となるため、決算期末時点での資金繰りに留意するだけでも改善できます。
5. 過度な節税策は経審上マイナスになることも
節税を目的に過大な設備投資や経費計上をすると、利益が圧縮され、Y点にマイナスの影響を及ぼす場合があります。節税と経審対策はバランスが重要です。
注意ポイント
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減価償却を一括計上せず定額償却で平準化
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節税保険は慎重に検討
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決算書上の利益確保を優先
財務改善は中長期的な取組が重要
1. 決算期ごとに改善効果を確認する
経審のY点は毎年の決算書をもとに評価されます。短期で劇的に改善するのは難しくても、2〜3年計画で積み上げれば着実に点数が上昇します。
例:債務償還年数の推移イメージ
| 決算期 | 借入金 | 営業利益 | 債務償還年数 |
|---|---|---|---|
| 令和3年 | 5,000万 | 1,000万 | 5年 |
| 令和4年 | 4,000万 | 1,200万 | 3.33年 |
| 令和5年 | 3,000万 | 1,500万 | 2年 |
このように、計画的に返済と利益向上を両立すれば、債務償還年数は大きく改善できます。
2. 税理士・行政書士と連携して全体設計する
財務改善は決算書作成を担当する税理士、経審申請を担当する行政書士が連携して全体を見渡すことが理想です。節税と評価の両立を図りながら、経審で有利な決算内容を計画的に作り上げます。
3. 技術力・社会性も並行して強化する
財務内容の改善と並行して、技術者の資格取得(Z点)、社会保険加入状況(W点)など他の評価項目も同時に底上げを進めることが総合評定値(P点)の向上には不可欠です。
行政書士の支援でできる財務改善サポート
1. 決算内容の分析と弱点抽出
行政書士は過去の経審結果や決算書の内容を精査し、評価に影響する「改善可能ポイント」を洗い出します。
「どの項目が何点足りていないのか」を数値で可視化できます。
2. 財務戦略の設計助言
決算期ごとに「利益はどれだけ必要か」「借入金はどこまで返済可能か」などをアドバイスし、税理士とも連携して計画的に財務改善を進められます。
3. 経審申請書類の作成代行
経審では財務内容だけでなく、多数の添付書類が求められます。行政書士がこれらの作成・整理を行うことで、経審の負担を大幅に軽減できます。
まとめ|財務改善で経審得点は必ず伸ばせる
経審で高得点を得るためには、財務内容の安定性と成長性が不可欠です。借入依存の低減、内部留保の積み上げ、黒字経営の継続といった基本的な経営体質の強化が、そのまま経審評価に直結します。
制度の特性を理解して決算設計を行えば、2〜3年で確実にP点は上昇させることが可能です。
行政書士あさみ法務事務所では、決算分析から経審申請、スコア改善まで一貫してサポートしています。経審対策を本格的に始めたい建設業者様は、ぜひ一度ご相談ください。
