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古物商許可の名義変更・住所変更の手順を解説
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古物商許可を取得したあとも、事業の変化に応じて「名義」や「営業所の所在地」を変更する場面は少なくありません。たとえば個人から法人へ事業形態を変えたり、営業所を引っ越ししたりする際は、古物営業法に基づく所定の手続きが必要です。
変更手続きを怠ると、最悪の場合「無許可営業」と判断され、罰則を受ける可能性もあります(古物営業法 第31条)。また、古物商許可は各都道府県の公安委員会が管轄しており、地域によって提出書類や扱いが異なる場合もあるため、制度の正確な理解が不可欠です。
この記事では、古物商許可における「名義変更」と「住所変更」の違いと手続き、注意点について、行政書士の視点からわかりやすく解説します。
古物商許可の「名義変更」とは何か
1. 古物営業法に「名義変更」という制度はない
まず大前提として、古物営業法には「名義変更」という制度は存在しません。
たとえば、以下のように営業主体が変わる場合は「変更届」ではなく新たな古物商許可の取得が必要になります。
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個人事業から法人へ切り替える場合
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他人に事業を譲渡した場合(M&Aや後継者への承継など)
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法人の合併、分割などにより法人格自体が変更された場合
このようなケースでは、新しく許可を申請し、元の名義については廃止届を提出する流れになります。
2. 実質的な営業主体の変更があれば新規申請が必要
名義変更が必要かどうかを判断する最大のポイントは、営業主体が変更されたかどうかです。
たとえば代表者が変更されても、法人格が同じで、営業所や運営内容に変化がなければ、変更届で対応可能な場合もあります。
逆に、法人名義から個人名義へ変更する場合は、営業主体がまったく異なるため、新規申請となります。
3. 新規申請の際に行うこと
名義が変わる場合は、次の手続きが必要になります。
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新しい営業主体による古物商許可の申請(法人または個人)
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古い営業主体による「廃止届出書」の提出
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古物商プレート(標識)の変更・再掲示
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特定商取引法表示内容の更新(自社サイトやアプリ内)
これらを怠ると、「古物商を無許可で営業している」と判断される可能性があります。
古物商許可の「住所変更」とは
1. 営業所の移転には変更届が必要
古物商許可を取得した後に営業所を移転した場合、公安委員会へ変更届出を行う義務があります(古物営業法 第7条)。
同一都道府県内での住所変更であれば、許可の再取得は不要ですが、変更届を出さないと古物商台帳の内容と営業実態にズレが生じるため、後にトラブルの元になります。
提出期限は、変更から20日以内です。
2. 他府県への移転は「新規申請+廃止届」が必要
古物商許可は、営業所の所在地ごとに都道府県公安委員会が管轄します。
そのため、他府県に営業所を移転する場合は、新たな許可申請が必要です。
この場合の流れは以下の通りです。
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移転先所在地を管轄する警察署(生活安全課)に新規許可申請
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現在の公安委員会へ「廃止届出書」を提出
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古物商プレートの作り直しと掲示(新番号に更新)
「住所が変わっただけ」と軽視すると、知らぬ間に無許可営業と判断されるリスクがあります。
3. 変更届の提出書類
以下は、住所変更届を提出する際の主な書類です。
書類名 | 補足説明 |
---|---|
古物商変更届出書 | 所定様式(都道府県警や警察署で取得) |
賃貸借契約書(写し)または使用承諾書 | 営業所の使用権限を証明するため |
営業所外観・内観の写真 | 管轄によっては必須(営業実態の確認に使用) |
現行の古物商許可証(原本) | 変更届提出時に必要 |
営業所の略図・所在地説明図 | 警察署によっては求められることがある |
なお、法人であれば定款の事業目的に「古物営業」が含まれているかも確認されます。
名義変更・住所変更にまつわる注意点
1. 自宅を営業所にした場合は事前確認が必要
営業所を移転する場合、新しい物件が古物商の営業所として使用可能かを事前に確認することが重要です。
次のような場所では許可が下りない可能性があります。
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賃貸契約で「住居専用」「事業利用禁止」とされている物件
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バーチャルオフィス(物理的実体が確認できない)
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オーナーの使用承諾が取れていない親族名義の住宅
事前に使用承諾書を取得したり、オーナーと契約内容を確認することが必要です。
2. 複数の変更が同時にあるときの対処法
代表者の交代と営業所の移転など、複数の変更が同時に発生した場合は、変更届と新規申請・廃止届の組み合わせが必要になることがあります。
一見単純そうに見える変更でも、法的には異なる手続きが絡むことがあるため、行政書士など専門家の判断を仰ぐのが確実です。
3. 届出を怠った場合のペナルティ
古物営業法 第31条では、無許可営業や虚偽の届出を行った場合、3年以下の懲役または100万円以下の罰金とされています。
また、変更届の提出義務(第7条)を怠った場合は30万円以下の罰金の対象になります。
行政書士ができるサポートとは
1. 届出か新規申請かを正しく判断
名義変更や住所変更に際して「変更届だけでいいのか?」「新たな許可が必要なのか?」を誤ると、無許可営業や許可取り消しの原因になります。
行政書士は法的な判断に基づき、最適な手続きフローを事業者に提案することができます。
2. 書類の作成・整合性チェック
特に法人の場合、役員の変更届、定款、登記事項証明書など、関係する書類が多岐にわたります。
行政書士であれば、必要書類の収集から記載内容の整合性確認まで一括対応可能です。
3. 管轄警察署との事前相談・代行提出
管轄ごとに細かい運用の違いがあることも多く、写真の形式、略図の書き方、受付時間の違いなどに戸惑うケースも少なくありません。
行政書士は警察署とのやり取りを代行し、申請の通過率を高めることができます。
まとめ|古物商許可の変更は正しい手続きが不可欠です
古物商許可の「名義変更」や「住所変更」は、一見すると簡単に済むように思われがちですが、営業主体が変わるかどうか、営業所の所在地が変わるかどうかによって必要な手続きがまったく異なります。
「変更届で済むと思っていたが、実は新規申請が必要だった」
「営業所を移転したが、変更届を忘れてしまっていた」
このようなトラブルは、古物営業の現場で非常に多く発生しています。
行政書士あさみ法務事務所では、古物商許可の変更手続きに関して、
書類作成から提出代行、警察署とのやり取りまで一貫してサポートいたします。
「自分のケースがどれに当たるのか分からない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。