農業法人設立
農業法人とは
農業法人(農地所有適格法人)とは、農業を事業として法人化し、経営の発展や継続性を高めるための仕組みです。
簡単に言えば、「農業を会社の形で運営する」スタイルです。近年、規模拡大・後継者問題・補助金対策などの観点から、農業法人化を検討する方が増えています。
農業法人設立の基本要件
農業法人として認められるためには、以下のような要件を満たす必要があります。
1,法人形態
農業法人には以下の2つの主な形態があります
- 会社法人(株式会社や合同会社など。※株式会社は公開会社でないことが条件)
- 農事組合法人(組合的性質を持つ法人)
2,事業内容
- 売上高の過半が農業(耕種・畜産)であること
- 自ら生産した農産物の加工・販売・観光農園などの関連事業も含む
3,議決権構成
- 農業関係者が株主総会の議決権の過半数を保有していること
4,役員要件
- 役員の過半数が、農業に年間150日以上従事する構成であること
- 少なくとも1人の役員または重要な使用人が年間60日以上農作業に従事していること
農業法人化のメリット
農業法人にすることで、次のような利点があります。
1,経営の信用力が向上
- 法人格を持つことで金融機関の信頼が増し、融資が受けやすくなります
- 取引先との契約もスムーズに行えるようになります
2,補助金・支援制度が活用しやすくなる
- 国や自治体の農業支援策は、法人を優遇対象とするケースが多くあります
- 「認定農業者」制度との連携も図りやすくなります
3,節税効果が期待できる
- 所得が大きくなった場合、個人より法人の方が税率が低いことがあります
- 経費計上の幅も広がり、税負担の軽減が見込めます
4,経営の多角化・拡大がしやすい
- 加工品の製造や観光農園の運営など、農業関連事業を広げやすくなります
- 外部からの出資も受けやすく、規模拡大につなげることが可能です
5, 人材の確保・雇用管理がしやすい
- 労働条件の整備(社会保険など)が可能になり、優秀な人材を確保しやすくなります
- 雇用管理がしやすくなり、安定した経営体制を構築できます
6,家族経営からの脱却・後継者対策
- 家族外のメンバーも役員にでき、将来の後継者対策にも柔軟に対応できます
- 出資と経営を分けやすく、世代交代もスムーズに進みます
農業法人化のデメリット・注意点
メリットの多い農業法人ですが、以下のような注意点や負担もあります。
1,設立・運営に費用がかかる
- 設立時に登記費用や定款認証費用がかかります(株式会社で約20万円前後)
- 顧問税理士や事務作業の外注が必要なケースも
2,経理・税務の手続きが煩雑になる
- 帳簿や決算書の作成、法人税・消費税の申告が必要です
- 簿記や会計の知識が求められます
3,農業委員会とのやり取りが増える
- 法人名義で農地を取得する場合、農業委員会の許可が必要です
- 設立後も、毎事業年度の終了後3か月以内に、事業の状況等の報告することが義務付けられています。
4,運営に制限がある
- 農地法により、農作業に従事する役員の要件などが課されます
- 他の業種の法人に比べ、柔軟な経営が難しい面もあります
5, 社会保険の加入義務が発生する可能性
- 一定の条件を満たすと健康保険や厚生年金の加入義務が発生します
- 社会保険料の負担が重くなる場合もあります
6,小規模経営には不向きな場合も
- 規模の小さい農業経営では、コストや事務負担の方が大きくなるケースがあります
- 無理な法人化は逆効果になることも
株式会社で農業法人を設立する流れ
株式会社や合名会社として設立する場合は、一般的な会社の設立と手続きは同じです。
以下に、設立までの具体的なステップをご紹介します。
Step1|無料相談・ヒアリング(初回無料)
まずはお気軽にご相談ください。
農地の有無や経営状況、将来的な展望などをお聞きし、株式会社での法人化が適しているかを検討します。
▶ この段階で確認すること
- 農地の取得・利用状況
- 株主・役員の構成予定
- 農業従事日数など農地法の要件
- 農業法人としての目的(節税・補助金・事業承継など)
Step2|設立方針の決定と必要情報の整理
株式会社設立に必要な内容を固めていきます。
農業法人としての要件(議決権・役員構成・事業内容)を満たす形で設計します。
▶ 検討・決定する内容
- 会社名(商号)・本店所在地
- 目的(農業および関連事業)
- 出資者(株主)・役員構成
- 決算期・資本金の額
Step3|定款作成・公証人認証
定款は「農業法人としての目的」や「農業に関する事業内容」を記載し、株式会社としてのルールを定めた文書です。
公証役場にて認証を受ける必要があります(行政書士が作成・代理手配します)。
▶ 注意点
- 「農業法人」として認められる目的の記載が必要
- 公証人の事前確認と日程調整が必要(約1週間前に予約)
Step4|出資金の払い込み
資本金を代表者の個人口座に入金し、「払込証明書」を作成します。
Step5|法務局への登記申請(設立)
司法書士と連携し、法務局にて会社設立登記を行います。
登記完了により、正式に「株式会社としての農業法人」が成立します。
Step6|農業委員会への届出・許可申請(必要な場合)
農地を法人名義で取得・利用する場合は、「農地所有適格法人」として農業委員会の許可・届出が必要です。
必要書類の作成・提出も当事務所がサポートします。
▶ 主な必要書類
- 農地法第3条許可申請書または第2条届出書
- 株主名簿・役員の農業従事証明等
- 事業計画書、定款写し、登記事項証明書
Step7|設立後の各種届出・手続き
法人設立後、税務署・年金事務所・都道府県などへ各種届出が必要です。
希望される方には、補助金・認定農業者制度の案内も行っております。
▶ 届出先の例
- 税務署(法人設立届出書・青色申告の承認申請など)
- 年金事務所(社会保険の新規適用届)
- 市区町村(法人住民税の届出)
Step8|運営開始・必要に応じたフォロー
農業法人としての事業運営を開始します。
設立後の運営に関しても、農地利用報告・役員変更・増資手続きなどを継続的にサポートいたします。
設立までの期間は?
- 農地を取得せず、農業委員会の関与が少ない場合は 2〜3週間程度
- 農地の許可申請を伴う場合は、1〜2か月程度かかることもあります(農業委員会の審査日程による)
法人化すべきか迷っている方へ
農業法人化にはメリット・デメリットがあり、経営規模や目的によって最適な判断が異なります。
行政書士あさみ法務事務所では、お客様の経営状況を丁寧にヒアリングし、最適な法人形態と設立プランをご提案します。
まずはお気軽にご相談ください。
費用について
サービス内容 | 料金(税込) |
---|---|
農業委員会との協議、営農計画書作成、農地法3条許可申請、定款作成(株式会社)等 | 185,000円~ |
株式会社設立の法定費用
名称 | 料金 | 備考 | |
---|---|---|---|
登録免許税 | 150,000円 | なし | |
定款認証料 | 資本金100万円未満 | 30,000円 | なし |
資本金100万円以上 300万円未満 | 40,000円 | ||
資本金300万円以上 | 50,000円 | ||
定款印紙代 | 当事務所ご依頼の際は電子定款のため不要 0円 | 電子定款でない場合は40,000円 | |
定款謄本取得 | 約2,000円 | なし | |
合計 | 182,000円~ |
※法務局への登記申請手続きは、当事務所提携の司法書士又は本人申請となります。(別途、司法書士報酬がかかります。)
※法人の印鑑作成が必要になります。(会社の実印、銀行印、角印)